"Q.A.S.B. II" は今のところアナログ(LP)のみのリリースとなります。
CDを楽しみにしていただいていた方(いらっしゃればですが・・・) ごめんなさい!
でも、少しでも言い訳を聞いていただきたいので、この際この場でちゃんと表明しておきたいと思います。
なぜアナログか?
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理由はいくつかあるんですが、一番大きな理由は、
Q.A.S.B. サウンドを聴いてもらうのにはアナログがベストな方法だと考えるから
です。
初めに触れておきますが、CDの音が悪いわけではないです!「違う」ものだということです。いい悪いではなく、どちらが好きかということ。
今回プロモーション用のCD(非売品です!)を作りましたが非常に良い音質です。こと音圧に関して言えばむしろCDの方が勝るような気がします。
それでも、アナログ(LP)でリリースする理由とは。
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4年前に制作したファーストアルバム "Q.A.S.B." に続いて、今回もハイ・クオリティなVintage アナログテープ用レコーディング/マスタリング機材を有する Studio Dede にて録音しました。
アナログ・マルチトラック・レコーダーは STUDER A80、 使用テープは AMPEX 499。 特に中音域から低音域が暖かく、太く、そして丸みがあり、音量を上げても決して耳を痛めないナチュラルなサウンド。まさに
音が手で触れるような感覚。全ての楽器・声にその良さが反映されています。
※ちなみに今回の録音に使用した AMPEX 499 は4年前の録音のために購入したものをそのまま使っています。次作のレコーディングでも活躍してくれるハズです。
これらのアナログテープ用レコーディング機材のほとんどは、デジタルレコーディングが導入された1980年代には作られなくなってしまいます。当然テープの生産量も現在では少なく高価なものに。
その後のデジタルレコーディング技術の進歩のおかげで、録音・楽曲制作行為の敷居が低くなり、より多くの作り手が現れ、多種多様な音楽がこの世の中に溢れ、より多くの人の耳を楽しませることに大きく貢献することになります。
時期を同じくして、メディアも1980年代に入りアナログからデジタル(CD)時代に。
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ここでCDの話になりますが、一言でCDといっても実はいろいろな形態があります。昔のCDの裏ジャケットをみると、ADD とか AAD とか DDD という記号が書かれています。
"A" はアナログ、"D" はデジタルを表すことは容易に想像できると思いますが、この順番は左から "録音方法” 、 "ミックス・マスタリング方法”、 "メディア・フォーマット” を意味します。
AAD 「アナログ録音・アナログマスタリングのCD」
ADD 「アナログ録音・デジタルマスタリングのCD」
DDD 「デジタル録音・デジタルマスタリングのCD」
DDA 「デジタル録音・デジタルマスタリングのLPなど」
デジタルレコーディングの音、デジタルマスタリングの音はノイズは初めからカットされているかもしれませんが、残念ながら、サンプリング周波数の制限から、暖かく、太く、丸みのある耳に優しいサウンドの成分までカットしてしまうのです。
CDの中で言えば、AAD がもっともアナログに近いCDということになります(ちなみに、4年前のファーストアルバム"Q.A.S.B." はこの方式によるCDです)。
DDDは言葉は悪いですが最も薄っぺらいサウンドで、ジャンルにもよりますが、特に1980年代、90年代前半に作られたDDD方式のCDは、CDプレイヤーに乗せた瞬間それとわかります。
※その後、デジタルレコーディング技術は進歩して、アナログレコーディングに限りなく近い音質での録音も可能になり、中にはどちらなのか頭を悩ませる音源もあったりします。以前、DDA は本末転倒だと思っていましたが、現在の技術であればメイクセンスすると思います。
では理想は AAA か?ということになりますが、1970年代の録音技術者の中には凄い人がいたもので、ダイレクトカッティングなる究極の録音方法がありました。
恥ずかしながら最近まで不勉強でよく知らなかったのですが、ダイレクトカッティングは演奏しながらマスタリングもしつつ、そのまま同時に原盤を刻んでしまうという今では考えられない驚異的な方法。一気に仕上げてしまうという方法ですね。
ここまでこだわるのは技術的にも費用的にも難しいですが、なるべく近づけたいという思いはあります。今回のプレスはドイツにある工場で行っているためカッティング直前のデータはデジタルになっています。直前ギリギリまで出来る限りアナログで処理していくという方法をとっています。
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話は若干それてしまいましたが、Q.A.S.B. のミッションである1970年代の音楽の再現は 音質の再現でもあります。各収録曲についての解説は別の稿に譲りますが、音質が伴ってこそ音楽。
その時代の音楽に合う”音”が必ず存在し、それを良いと感じるリスナーやDJがいて、それは決して古いものではなく、後世に伝えられるべきものと信じています。
Studio Dede のエンジニアの方々も考えに共鳴していただいて、前作同様、一緒に音作りをしてくださいました。
冒頭にも述べたように、CDの音質はかなり良いです。ですが、より当時の空気感を味わっていただくにはまずはLPでリリースすべきではないか?
アナログという媒体で世に出すことの意味をこのデジタル全盛時代に敢えて問いかけたいと思います!